3 囲み
これは、暗渠を囲むものたちを含め切り取った風景全体の味わいです。
・どれだけ川筋が凹んでいるか
・崖や擁壁に挟まれているのか
・川幅は太いのか、細いのか
など周囲の状況やそれとの川(暗渠)のバランスに着目して鑑賞してみましょう。
*
まずは川の高低差を感じましょう。川筋の両側は高く、そして川筋自体は低くなっていることでしょう。
街なかの暗渠では、他の地面からほんの少し低くなっているケースがよくあります。
下は横浜、滝の川の暗渠。
一見、暗渠がすっかり風景に溶け込んでいるようにも見えますが、
階段数段分の違和感、として街に刻まれていることがわかります。
この違和感を、街の柔らかな表情と見るか、未だ残るわがままな人間からの疎外と見るか。
それを感じながら今のあなたの心のありようと向かい合ってみましょう。
またある場所では、両側もしくは片側が、切り立つように聳えているかもしれません。
下は同じ滝の川の上流地点です。
右手右岸は崖。如何にこの川の流れが激しいといえ、ここまでに削るには何年かかったことでしょう。
その時間とともに、今の擁壁のありようを感じてみましょう。
擁壁にも、素材や積み方、付帯物などによっていろいろな分類があり、愉しみかたがあります。
私も過去のトークでこの問題をお話したことがありますが、
暗渠とのつながりがどんどん希薄になり、スベった苦い経験があるので
ここで詳しくは申し上げないことにします。
また擁壁ではなく家々などの建物に囲まれている、という川(暗渠)も多いはず。
擁壁が自然のかこいだとすればこちらは人工のかこいです。
積極的にその風景も味わいましょう。
下は東京東部、小岩付近の暗渠道です。
また平地に流れる用水の暗渠のように、何にも囲まれておらずすこーんとあけっぴろげな暗渠も清々しいものがあります。
下は葛飾区新高砂駅付近の暗渠。
さいごに、川(暗渠)の幅も大きく印象や風景を左右する要素です。
極細の暗渠にはたまらない非日常感・秘境感があり入口を見ただけで想像力が掻き立てられてぞくぞくするものですね。
この先に何が待っているのだろう、と確かめざるを得ない気持ちになります。
こちらは古河庭園から流れてくる藍染川の支流です。
また、こんなかつての大河の姿を誇るような暗渠も、その雄大さの分だけ大きな喪失感を抱かせてくれ、充分な寂寥感を味わうことができます。
下は足立区と埼玉県の県境付近、三味線堀の暗渠。
では次回は、「4.うわべ」を鑑賞していきましょう。